敵か?味方か?

はいさーい

HAMANAKO-BASEの宮城です!

ここ最近は猛暑でダウンされている方も多いのではないでしょうか?

幸い私は体調を崩すこともなく仕事をやれておりますが、油断は大敵。
一日2L近く冷たい麦茶を飲んで凌いでおります。

前回前々回と万博でのタツノオトシゴ展示での出来事を紹介させていただきましたが、
今回もそれと関係のある記事になってしまいますが読んでいってください!

今月のはじめ万博の現場担当者から
「水槽のガラス面に白い動く粒々が発生しているけど何でしょう?」
という質問を写真と一緒にいただきました。

古本に湧くダニのようです

写真を見た瞬間ピン!ときたのですが
これは「シオダマリミジンコ属Tigriopusというカイアシ類の一種だと思われます。
以下チグリオプスと呼びますね。

顕微鏡で見るとこんな感じ

Wikipediaより拝借いたしました。

海水水槽をやったことのある方でしたら見たけたことや
ガラス掃除の際に指先にざらざらとした感触を経験された方も多いのではないでしょうか。

恐らくほとんどがこのチグリオプスかヘビガイカンザシゴカイの一種で間違いないでしょう。
ちなみにヘビガイとカンザシゴカイは動きませんので、動いていたらチグリオプスですね!

シオダマリをいう名を冠する通り、潮溜まりでよく見られます。
潮溜まりは水温や塩分の変動が激しく、それに伴いチグリオプス自体も非常に丈夫でよく殖える生物なのです。

そのため生理学や遺伝学の実験に用いられてきた歴史があるようです。

また「ミジンコ」という名前から連想するに稚魚の餌になるのでは⁉と思われる方も多いかと思われます。
まさにその通りでチグリオプスは栄養豊富で稚魚の餌に最適!

水産試験場などで培養する試みも各所で行われています。

実際のところ稚魚の餌になったりプランクトンフィーダー(プランクトン食)の魚に適しており
タツノオトシゴの親戚であるヨウジウオの仲間や、ニシキテグリなどのネズッポの仲間の飼育法を調べると

「微生物が湧きやすいリフジウムやサンゴ水槽で飼育すると長期飼育しやすい」

といったニュアンスの記述がよく見られるのですが、その湧く微生物というのがこのチグリオプスなのです。

WEB魚図鑑よりhttps://zukan.com/fish/leaf30590
WB魚図鑑よりニシキテグリ(2017.09.15) – WEB魚図鑑

どちらも私の大好きな魚です。

ここまで読んだ感じ滅茶苦茶有益な生物に感じますよね~

しかし時と場合によっては非常に害のある生き物になるのです。



タツノオトシゴの飼育においてこれがまた厄介でして

もしタツノオトシゴを飼育したことがある方で
タツがクネクネと痒そうにしている仕草を見たことがあるようでしたら、
まず体に何か付着していると思ってもらって間違いないと思います。

その”何か”がチグリオプスであることが多く、
実際痒がっている個体を取り出してみると体表をアリンコのようにチョコチョコ動き回るさまが見て取れます。

チグリオプスは普段海藻や海草などに付着して藻類等を食べています。

乾燥コンブ食べるチグリオプス:ウィキペディアより引用

似た生物にケンミジンコなどがいますが、チグリオプスはよく泳ぎます。

対してタツノオトシゴは泳がずゆっくりホバリングしていたり、
じっとしている事が多いため体表にコケが生えることもしばしば…

そこに泳いできたチグリオプスが付着し、体表に生えた藻を食べたり体を這って
タツノオトシゴにストレスを与え、拒食になったり感染症を引き起こしたりするのでございます。

このチグリオプスには以前研修でお世話になった東海大学海洋学部の秋山研究室も相当手を焼いたようで
水槽内にいるということは当然配管内や濾過槽、そしてろ材の中にも蔓延っているため

見つかった場合は水槽とその循環系統を完全リセットするとか…

しかしながら万博の水槽はとてもリセットできる状況ではございませんので
チグリオプスの天敵?に頑張ってもらうことにしました!

寝ているところを起こしてパッキング。6時間ちょっとだから辛抱してくれ~

今回はイシヨウジとコウワンテグリに頑張ってもらいます(左の袋です)
そしてアメフラシみたいな生き物はタツナミガイというアメフラシの仲間でよく藻を食べてくれます😊
いじめると紫色の煙上の液体を出すので注意です。

完全なる駆除は目的ではなく、
少しでも減らしてタツノオトシゴが快適に過ごせるような環境に近づけられたら良いなという措置になります。

いつも通り深夜1時半に浜松を出て6時前には現地入りです。

前回の作業から2週間ちょっとですがさすがに気温も上がりもちろん水温も🆙

皆さん熱中症に気をつけて!

夜から朝にかけては水温が21℃~23℃になるようですが、
さすがにガラス張りの展示ですので日中は水温が30℃近くになるそうで…

一日の水温変化+チグリオプスによるストレスでタツノオトシゴの元気がなくなってしまうので、
一番日当たりの良い水槽で展示中のクロウミウマを比較的日当たりの穏やかな水槽へ移すことに。

作業後水合わせをし水槽に迎え入れ
コウワンテグリはすぐにガラス面をパクパクと(写真を撮る前に姿をくらましましたが)
イシヨウジはニョロニョロとウロチョロ

頑張ってね!

ヤドカリ同様よく水槽を観察していると見つけられると思いますので、是非探してみてください😊

クロウミウマは移動できましたが移動先の水槽の砂が薄く、海草を植栽できません。
植えていた海草は一旦回収し浜松で養生することにして、月末砂を増やすタイミングで戻すことに。

水槽掃除前に写真を撮ってしまいましたが、海草の調子は良好😊

次回の作業までに準備をします💪

今回もここまで読んでいただきありがとうございました!

蒸し暑い日が続きますので皆さんもご自愛ください。

ではでは~

この記事を書いた人

崚 宮城

宮城崚